相続時精算課税とは?
相続時精算課税の制度とは、生前に子や孫に2,500万円までであれば贈与税がかからないという贈与税の制度です。
相続時精算課税は要件に該当する場合に贈与者が異なるごとに選択することができます。
相続時精算課税の制度を適用する場合は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
ただし、言葉のとおり贈与した方が亡くなられた時、相続財産に加算して、相続税として精算する制度です。
相続時精算課税制度を選択する場合はメリットとデメリットを十分理解したうえで実行してください。
まず対象者について確認してみましょう
- 贈与者(贈与をする人)は60歳以上の父母や祖父母
- 受贈者(贈与を受ける人)は20歳以上で、かつ、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人及び孫
注:年齢は贈与があった年の1月1日現在のものです
相続時精算課税の注意点
一度この相続時精算課税を選択すると、その後、同じ贈与者からの贈与について「暦年課税」へ変更することができません。
暦年課税 | 相続時精算課税 | |
選択 | 不要 | 必要(贈与者ごと、受贈者ごとに選択) |
課税価格 | 贈与時の評価額 | 贈与時の評価額 |
控除 | 基礎控除(毎年):110万円 | 特別控除(贈与者の一生の内で)2,500万円 |
税率 | 10%~55%の8段階 | 2,500万円を超えた部分に対して一律20% |
相続時 | 相続開始前3年以内に 贈与された財産の総額 (110万円以下の場合含む) | 制度適用後、贈与された贈与時の評価額の総額 (支払った贈与税は相続税から控除できる。相続税額を超えて納付した贈与税は還付される。) |
受贈者(もらう方)からみて、父親には「相続時精算課税」を適用、母親には今まで通りの「暦年課税」を適用するということも可能です。
通常の贈与(暦年贈与)との比較検討は必要です。
相続税の計算をするときには贈与時の評価額で加算することとなりますので、財産に将来値上がりが期待できる場合、生前贈与で適用する方が有利となります。
例:父及び母から生前贈与を受け、父からの贈与について相続時精算課税を選択する場合
(1年目)父から2,000万円の贈与を受け、父からの贈与について相続時精算課税を選択する
●父からの贈与
<課税される金額の計算>
2,000万円 - 2,000万円(特別控除額) = 0円
<翌年以降に繰り越される特別控除額の計算>
2,500万円 - 2,000万円 = 500万円
(2年目)父から800万円の贈与を受ける
<課税される金額の計算>
800万円 - 500万円(特別控除額) = 300万円
<贈与税額の計算>
300万円 × 20% = 60万円(贈与税額)
相続時精算課税の特別控除を受けるためには、贈与税の期限内申告が必要です。
なお、相続時精算課税を選択した場合、その選択に係る贈与者(上記の例では父)が死亡したときの相続税の課税価格に、その贈与者から贈与により取得した財産の贈与時の価額を加算することとなります。
上記の例では父から贈与を受けた財産の合計額2,800万円を父が死亡したときの相続税の課税価格に加算することとなります。
支払った贈与税60万円は相続時に相続税額から控除し、控除しきれない場合(つまり相続税額が60万円より低い)は、控除しきれなかった税額の還付を受けることができます。
相続時精算課税を選択した場合のメリット・デメリット
メリット
- 一度に多額の贈与を(2,500万円までは)贈与税を納める必要なく行うことができます。(ただし相続財産に加算)
- アパートやマンションなどの収益物件の贈与であれば、贈与後の収益は受贈者(もらった人)のものとなり、贈与者(あげた人)の財産の今後の増加を防ぐことができるため、相続税対策になります。
- 値上がりする可能性が高い財産を贈与すると、贈与者の財産の増加を防げるので、相続税対策になります。
デメリット
- 年に110万円以下の贈与であっても、贈与税申告の必要があります。
- 贈与した金額を相続発生時に相続財産に加算するので、贈与税がかからなかったとしても、相続税がかかる可能性があります。
- 孫は本来相続人ではないので、相続時に相続税の納税義務者となり、相続税の2割加算の対象となります。(一回相続を飛ばせます)
※その他のデメリットとしては不動産を取得する際、①贈与(相続時精算課税含む)で取得する場合、②相続で取得する場合での税額に違いがあることです。
例:アパート(固定資産税評価額1,500万円)を①贈与による取得、又は②相続による取得をされる場合の比較
注:不動産取得税については、特例要件を満たしていれば控除を適用することが可能です
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メリットのみではなくデメリットも存在するので、相続専門の税理士にご相談の上、検討されることをオススメします。