FMちゅーピー「円満相続安心くらぶ」(令和2年7月17日)」に出演しました。
ラジオ出演内容
毎月第3金曜日のこの時間は、「円満相続安心くらぶ」のコーナーです。
誰でもいつかは経験する「相続」に際し、愛する家族が争うことなく、円満に、そして相続後はさらに幸せになれるように、相続開始までの準備や相続に関する豆知識などについてご紹介します。
お話をお伺いするのは、円満相続支援士、税理士法人タカハシパートナーズの寺尾 大介(てらお だいすけ)税理士です。
ラジオをお聞きの皆さん、こんにちは!
税理士法人タカハシパートナーズの寺尾です。
寺尾さん、よろしくお願いします。
さて、本日はどんなお話をしてくださいますか。
はい、本日は、先月に引き続き、相続法改正の中でまだご紹介していない、「遺留分制度の見直し」と「相続の効力等に関する見直し」、そして「相続人以外の者の特別寄与分」の3点についてご説明したいと思います。
はい、よろしくお願いします。
まずは「遺留分制度の見直し」ですが、
これは、例をあげて説明した方が分かりやすいかなと思いますので、例えば、お父さんが亡くなって、相続人は兄と妹の二人、お父さんには遺言書があり、自分が代表者となっていた会社は事業を手伝っていた兄に、預金は妹にそれぞれ相続させるとしていました。
会社の評価額は1億円、預金は1,000万円として、自分の取り分が少ない妹が、兄に遺留分減殺請求を行ったというケース。
これまでの制度だと、遺留分減殺請求権の行使によって会社の持分に共有状態が生じてしまい、事業経営に支障が出るなどの問題がありました。
何が問題かと言うと、会社の評価額とは、つまり会社の株式の評価なので、妹には渡したくなかったり、遺留分に見合った株数を渡すと、経営上問題が生じたりということが想定されます。
はい、なんとなくイメージできました。
そこで、今回の改正で、遺留分減殺請求権から生じる権利を金銭債権化することと、金銭をすぐには用意できない場合は裁判所が支払いの猶予期間を与えることが出来るようになりました。
金銭債権化とは、株で渡すのではなく、評価額に見合う金額をお金で精算するということですね。
はいはい、分かります。
この改正により、遺留分減殺請求権の行使による共有関係の発生を回避することや、遺贈の目的財産を受遺者に渡したいという遺言者の意思を尊重することができるようになりました。
なるほど。会社経営者の方などは知っておいたら良い情報ですね。
はい、そうですね。次に「相続の効力等に関する見直し」です。
この見直しのポイントとしては、相続させる旨の遺言等により承継された財産については、登記をしなくても第三者に対抗できるとされていた現行法について、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないこととされた、ということです。
この見直しによるメリットはなんですか。
はい、現行の制度では、遺言の内容を知らず、登記を信じて差し押さえをしようとした債権者などが、実質の所有者が違うことから債権回収ができないといった、債権者の利益を害することとなっていたので、改正により相続させる旨の遺言についても、法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件がない場合、債権者・第三者に対抗することができなくなり、遺言の有無やその内容を知りえない債権者や第三者の取引の安全を確保できることとなり、ひいては、登記制度や強制執行制度の信頼を確保することにもつながります。
なるほど、そんな問題もあったんですね。
はい、そして最後に、これは結構皆さん反響があり、注目されているなと思った「相続人以外の者の特別寄与分」についてです。
この制度の見直しのポイントとしては、相続人以外の親族が、被相続人の療養看護などを行っていた場合、一定の要件のもとで相続人に対して金銭の支払いを請求することができるようになったということです。
これは私も気になっていました。
これまでは相続人以外の者、例えば長男の奥さんが、長男がお父さんよりも速くなくなった後も、同居する義理のお父さんの面倒や介護をしていたとしても遺言などで財産をもらうようになっていない限り相続財産の分配を受けることはできず、お父さんの面倒を全く見ていなかった長女や次男が相続財産を取得することができるのに対して、心情的に不公平感があるという声がありました。
分かります。長男が先に亡くなっているから、子供もいなければ全く相続する権利がないですもんね。
はい。今回の改正で特別寄与者という立場が保護され、介護等の貢献に報いることができ、不公平感が是正されていけばよいなと思っていますが、「特別寄与者」と認められるためにはいくつかの条件がありますのでご紹介しておきます。
条件があるということは、同じようなことをしていても、受けられない人もいるということですね。
はい、そうですね。
まずは、請求できる要件として、「相続人以外の親族」が「無償で被相続人の療養看護などの労務提供」をして、「被相続人の財産の維持増加」に特別の寄与をした場合に相続人に対して請求できるとされています。
ここでいう「親族」とは、6親等内の血族、その配偶者、3親等内の姻族の事をいいますので、例えば、子の配偶者や、先順位の相続人がいる場合の兄弟姉妹、配偶者の連れ子、などが対象となりますが、この制度はあくまでも法律婚を前提としていますので、被相続人の内縁の妻や、その連れ子、そして近所のおばちゃんなどは対象となりません。
法的に関係のない他人ではダメということですね。
はい、そうなんです。
そして、「無償で」とあるように、生前に被相続人から対価や報酬をもらっていた場合にも対象になりません。
さらに、「被相続人の財産の維持または増加」という言葉、介護することでどうやったら財産を維持し、または増加することができるの?とちょっと何を言っているか分からない条件もあるんですが、特別寄与料の支払いは、相続人と寄与者の当事者間の合意があれば決まるので、相続人側が支払いを拒否しなければ特に難しく考えなくてもいいと思います。
なるほど。
問題なのが、相続人が支払いを拒んだり、支払額をいくらにするかで協議がまとまらない場合です。いくらまで請求できるのか?この金額については、「被相続人の財産の維持増加に特別の寄与をした貢献度合いに応じて相続財産を取得する権利を認める」とされていますが、具体的に寄与と認められる行為や、どういう寄与の仕方をした時に、どの程度の寄与分が認められるのか、というポイントははっきりと定められていませんので、協議がまとまらない場合は、家庭裁判所で決定をしてもらうようになります。
うーん、前に進んだような、進んでいないようなという感じですね。
今後、事例が増えてくれば、ある程度の指標ができてくるのではないかなと期待しています。
寺尾さん、本日もありがとうございました。