FMちゅーピー「円満相続安心くらぶ」(令和4年1月21日)」に出演しました。
毎月第3金曜日のこの時間は「円満相続安心くらぶ」のコーナーです。
誰でもいつかは経験する「相続」に関し愛する家族が争うことなく円満に、そして相続後はさらに幸せになれるように、相続開始までの準備や相続に関する豆知識などについてご紹介します。
お話をお伺いするのは円満相続支援士、税理士法人タカハシパートナーズの寺尾 大介(てらお だいすけ)税理士です。
ラジオをお聞きの皆さん、こんにちは!税理士法人タカハシパートナーズの寺尾です。
寺尾さん、よろしくお願いします。
さて、今日はどんなお話をしてくださいますか。
今日は、先月国税庁のホームページで公表された令和2年分の相続税の申告事績と令和2事務年度の調査事績の状況についてお伝えしたいと思います。
はい、よろしくお願いします。
全国の数値と広島国税局これは広島、岡山、鳥取、島根、山口の中国5県の合計数値、そして広島県の数値の3つの数値をご紹介していきたいと思います。
まず相続税の申告事績ですが、全国の数値です。死亡した人の人数が1,372,755人で、前年比99.4%と少し少なくなっています。
余談ですが、コロナが重症化して人がたくさん死ぬんじゃないかと騒がれていた割には死亡した人の数は減っているんだなと感じました。
確かに、言われてみればそうですね。
そして、中国5県の数値は87,190人で、前年比97.3%、広島県の数値は30,244人で、前年比96.8%と、いずれも少し減っていることが分かります。
ちなみにこの死亡者数は厚生労働省の「人口動態統計」のデータに基づいているそうです。
広島も亡くなった方の人数が減っていたんですね。
はい。そしてこの死亡者数に対する相続税の申告書提出件数ですが、全国の数値が153,023件で前年比103.5%となっており死亡者数が減っているのに相続税を申告した件数は増えているという状況が伺えます。
えーっ、普通に考えたら、亡くなる人が減ったら、相続税の申告件数も減るように思いますけど逆に増えてるんですね。
そうなんです。ちなみに、この申告件数には相続税額のない通称ゼロ申告の件数も含まれているんですが、中国5県の数値では7,596件で、前年比100.7%となっており、広島県の数値では3,323件で、前年比102.4%とやはり前年よりも相続税の申告件数は増えている状況が伺えます。
広島でも亡くなった人の数が減っているのに、相続税の申告件数は増えているんですね。これにはどんな理由が考えられますか。
そうですね。中国5県の他の県の状況を見てみると、まず鳥取県の死亡者数は7,096人で前年比93.3%、申告件数が412件で前年比91.8%と、死亡者数に応じた申告件数となっています。
島根県は死亡者数が9,585人で前年比98.7%、申告件数が542件で前年比98.0%とこれも死亡者数に応じた申告件数となっています。
岡山県は、死亡者数が21,788人で前年比99.3%、申告件数が1,892件で前年比98.7%とこれも死亡者数に応じた申告件数となっています。
山口県は、死亡者数が18,477人で前年比96.8%、申告件数が1,427件で前年比103.4%とここは広島や全国と同じく、死亡者数の減少に反して、申告件数が前年より増えています。
中国5県の中でも違いがあるんですね。
そうですね。このことから、私が考える申告件数が増えている要因は土地価格が上昇している地域が広島や山口には多くあって、一人当たりの相続財産の価額が増えたので、死亡者数は減っているけども、申告の対象となる人の数が増えたというものです。
なるほど、確かに広島市内の地価が上がっているという情報はよく聞くようになりましたもんね。
そして、次に令和2事務年度の調査事績についてですが、まずこの事務年度という言葉なかなか皆さん聞きなれない言葉だと思いますが、税務署では仕事の都合上、1年の区切りを7/10としていますので令和2事務年度というと、令和2年7月10日から令和3年7月9日までとなります。
それを踏まえて、まず全国の実地調査の数値が5,106件で前年比が48.0%、中国5県の数値では240件で、前年比50.4%と半減していますが、これはもちろんコロナの影響で、人との接触を控えるように、国税庁でも最大限の配慮をした結果と言えます。
確かに、コロナ禍で人との接触や外出を控えている最中に税務調査で知らない人に会うのはお互いにどうかと思いますよね。
そうですね。ですからそれでもいいですよと了承された納税者のところにしか調査には行けていないようですが、それでも相続税はこの調査の機会を逃すと次がない税目ですから
実地調査でお客様と会うことができない場合でも、計算誤りや申告漏れが確実に分かっている場合には電話や文書でその内容を伝えて修正申告をしてもらう手続きとして「簡易な接触」という調査方法があり
この事績が、全国の数値で13,634件の前年比157.9%で、中国5県の数値で826件の前年比158.2%となっており、1.5倍の増加となっています。
つまり、調査官と会うことなく電話などで「ここが間違ってるので、修正してくださいね。」と税務署から連絡が来るということですね。
そうなんです。この調査方式だと、納税者の方も調査官から細かく質問を受けたりあれを見せろ、これを見せろというプレッシャーを受けることも少ないですし、ポイントを絞った調査となりますので調査の日数もそれほどかかりません。
それでいて、税務署の立場から見ても、誤り事項を修正していただく件数を多く処理することができますので、実は以前から国税庁では各国税局に対してこの簡易調査を積極的に取り入れるよう指導していて、平成29事務年度でいったん増えているんですね。
事績で紹介しますと、全国で29年が11,198件で前年比124.5%、中国5県の数値は29年が818件で前年比212.5%といったん激増するんですがやっぱり調査は納税者と会って資料を実地に確認しないとダメだという国税局の方針もあったりして、全国でも少なくなっていますが、中国5県の数値では、平成30年が486件で前年比59.4%と激減するんです。
そうなんですね。
私の個人的な意見としては、日数もかけずに、効率的に誤り事項を修正できるので、とても効果的ですし、納税者の精神的な負担も少ないですし、さらに国税職員の定員削減で調査事務量が確保できないという状況にも対応できるので、
ぜひ積極的に採用すべき調査方式だと思っていましたので、コロナのおかげと言っては語弊がありますが、この簡易調査が今後も定着しスタンダードになればいいなと思っています。
なるほど。事績の数値の変動からいろいろな要因が読み取れるんですね。
寺尾さん、本日もありがとうございました。
「どのくらい財産があると相続税がかかるのか」のページもぜひご覧ください。