相続の知識

相続人のいない相続財産は誰のもの?

相続人がいない場合、亡くなった人の財産は誰が取得するのでしょうか?
国庫に帰属する? ある意味正解です。しかし、すぐ国庫に帰属するわけではありません。
そうなるまでには様々な手続きを経なければならず、それらの手続きを経てもなお財産がある場合に、最終的に国庫に帰属することになるのです。手続きの流れは以下のとおりです。

①相続財産管理人の選任・公告
 

2か月

②相続債権者・受遺者に対する請求申出の公告
 

2か月

③相続人捜索の公告
 

6か月以上

④相続人不在の確定
 

3か月以内

⑤特別縁故者に対する相続財産分与の申立て
 
⑥国庫に帰属

①相続財産管理人の選任・公告

相続人がいない場合、相続財産を管理する人がいないので、相続財産の管理人選任を申し立てなければなりません。申し立ては、利害関係人又は検察官が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し行います。
相続財産管理人に選任されるために必要な資格はありませんが、一般的には弁護士や司法書士等の専門家が選ばれるケースが多いようです。
相続財産管理人が選任されると、官報で公告されます。

②相続債権者・受遺者に対する請求申出の公告

相続財産管理人選任の公告から2か月が経過したら、相続財産管理人は、相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をします。そして、判明した債権者・受遺者に対して弁済をします。

③相続人捜索の公告

②の公告から2か月が経過したら、家庭裁判所は、相続財産管理人の申立てにより、相続人を捜すため、6か月以上の期間を定めて公告をします。

④相続人不存在の確定

③の公告の期間満了までに相続人が現れなければ、相続人がいないことが確定します。

⑤特別縁故者に対する相続財産分与の申立て

自分が特別縁故者に該当すると思う人は、相続人の不存在が確定してから3か月以内に、家庭裁判所に相続財産分与の申立てをします。相続債権者や受遺者に対する弁済後になお残っている相続財産があり、申立人が特別縁故者として認定されれば、相続財産が分与されます。

⑥国庫に帰属

特別縁故者へ財産分与が行われてもなお、相続財産に余りがある場合、その残余財産は国庫に帰属します。

特別縁故者とは、相続人ではないが被相続人と特別な関係にあった人をいい、民法上、以下の3つが定められています。

(1)被相続人と生計を同じくしていた者

婚姻届を出していない内縁の妻や夫、事実上の養子や養親など

(2)被相続人の療養看護に努めた者

被相続人を献身的に看護・介護した人
(家政婦や看護師のような、療養看護をするかわりに相当の報酬を得ていた人は原則として対象外)

(3)その他被相続人と特別の縁故があった者

(1)(2)に準ずる程度に、被相続人との間に、具体的かつ現実的な精神的・物質的に密接な交渉があった人で、財産をその人に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に特別の関係にあった人

※ただし、特別縁故者に該当するか否かの判断も含め、特別縁故者に対する相続財産の分与が認められるかどうかは、裁判所の裁量に委ねられており明確な基準はありません。
裁判所はこれを決定するにあたり、被相続人と特別縁故者との縁故関係の厚薄、度合、特別縁故者の年齢、職業等に加えて、相続財産の種類、金額、状況、所在等の記録に現れた一切の事情を考慮して判断します。

特別縁故者は相続人ではないですが、財産分与を受けた場合、相続税の納税義務者になります。この場合、相続税の申告期限は、当該財産分与の審判確定日の翌日から10か月以内です。
なお、被相続人の一親等の血族及び配偶者に該当しないため相続税額の2割加算の対象となります。

相続人がいない場合、遺言を残しましょう!

以上のように、特別縁故者として財産分与を受けるには、膨大な時間と手間がかかり、また、裁判所の裁量によるところが非常に大きいため、かなり大変な手続きであることがお分かりいただけると思います。
もし、相続人は誰もいないが誰かに財産を残したいという場合には、遺言書を必ず作りましょう。
ただし、遺言の内容によっては、相続財産管理人の選任が必要になりますので注意が必要です。
判例によると、「相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は相続人不存在には当たらない」とされているため、このような場合は遺言執行者から遺産全部の引き渡しを受けることができますが、相続財産のうち特定の財産を遺贈する場合や相続財産の割合的遺贈の場合には、せっかく遺言書を作成していても相続財産管理人の選任が必要となり、面倒な手続きを経なければならなくなります。

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