相続の知識

「相続欠格」と「推定相続人の廃除」

法定相続人でも相続権がない!?

過去にこの豆知識でもご紹介した「法定相続人」。
これは民法という法律で定められているものですが、法定相続人であればどんな場合にも相続する権利があるというわけではありません。

自らの意志により相続を放棄する場合の他に、推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)の相続権が失われる場合が2つあります。
それが相続欠格推定相続人の廃除です。

わざと遺言書を破り捨てたら・・・?

遺言書

民法で定める相続欠格により、事情によっては相続人になれない可能性があります。
下記の相続欠格事由の③~⑤にあるように、遺言に関する不正行為については大変厳しい制裁が待っています。
この相続欠格事由にあたる場合には、審判や調停などの手続きを経ることなく法律上当然に相続人ではなくなります。また、遺贈による受遺者になることもできません。
ちなみに、通常は不利な内容の遺言だからという理由で破り捨てることが予想されますが、もし本人にとって有利な内容であった場合には欠格事由にあたらないとされているようです。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続させたくない人がいる時は・・・?

推定相続人の廃除

暴力を振るうなどの理由により、推定相続人の中に自分の財産を相続させたくない人がいるような場合には、家庭裁判所の審判または調停により相続権を奪うことができます。
生前に家庭裁判所に請求することもできますし、遺言に意思表示をしておくこともできます。
ただし、兄弟姉妹にはもともと遺留分を請求する権利がないので、遺言を残すことで他の者に相続させることができることから、廃除の請求や意思表示をする必要はありません。
もし、廃除した後でやっぱり相続させてあげようという場合には、同じく家庭裁判所に廃除の取消しを請求することもできますし、遺言で廃除の取消しの意思表示をすることも可能です。

遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

 

~おわりに~

相続欠格と相続廃除の大きな違いは裁判所に申し立てる必要の有無です。
とはいえ、廃除の請求さえすれば簡単に認められるわけではなく、もしこの制度を濫用されてしまった場合には不公平な相続となってしまうので、かなり厳格に審議されており、相続人が服役中などでない限り、非常に認められ難くなっているようです。
また、欠格者や廃除された者に子供がいる場合はその子供は代襲相続人となることができます。もしこの子供が複数人いるときは基礎控除額が増えることになるので、幸か不幸か相続税には有利な条件になるでしょう。
しかし、家族は財産にとらわれることなく、何よりも仲むつまじく毎日を送ってゆきたいものですね。

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