課税割合上昇の実態とその背景
2024年の統計では相続税の課税割合が10%を超え、東京圏ではさらに高水準です。
相続税は富裕層だけの問題ではなくなりつつあります。
本稿は国税庁データに基づき実態と背景、実務上の対策の要点を整理します。
東京圏における課税割合の高さと地域差
全国平均が10.4%であるのに対し、東京国税局管内では課税割合が16.2%に達しており、約6人に1人が相続税の課税対象となっています。また、被相続人1人当たりの税額も全国平均の約1,946万円に対して、東京国税局管内では約2,670万円と大きな差があります。
この地域差の背景としては、東京圏における地価水準の高さが大きく影響していると考えられます。
土地は相続財産の中でも大きな割合を占めており、特に東京都心部では長期的な地価上昇の影響により、一般的な住宅であっても評価額が高額となるケースが見られます。
その結果、預貯金や金融資産と合算した場合に、基礎控除額を超える事例が増加していると考えられます。もっとも、相続税の課税有無はあくまで総財産額と各種特例の適用状況によって判断されます。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用によって税負担は大きく変動するため、自宅を所有していることのみをもって直ちに課税対象となるわけではありません。
したがって、地域平均の数値をそのまま自分のケースに当てはめるのではなく、前提条件(評価額、相続人、利用予定の特例)を分解して確認することが実務上は近道です。
相続税の検討においては、「どの資産がどの評価方法で、どの程度の金額になるか」を把握することが出発点になります。
とりわけ土地・建物は評価方法が複層的で、路線価、倍率方式、固定資産税評価額などの基礎となる指標の確認が欠かせません。
地域差が大きい局面ほど、資産の中身と評価の仕組みを踏まえたうえで、次に述べる対策手段の適否を判断する必要があります。
例えば、親世代が何十年も前に購入した都内の一般的な一戸建てであっても、現在の路線価で計算すると、土地だけで5,000万円から1億円近い評価額になってしまうケースが珍しくありません。
そこに退職金や老後のために残しておいた預貯金、運用益が出ている株式などが加われば、たとえ特別な大金持ちでなくとも、あっという間に基礎控除額を突破してしまいます。
つまり、東京圏において自宅を所有していること自体が、自動的に相続税の課税対象となるリスクをはらんでいると言っても過言ではないのです。

