申告書提出後の流れ
申告書が提出されると、税務署は申告もれや計算誤りがないかなど、申告内容の審理を行い、調査が必要な案件を抽出します。
- 本人はもとより家族や関係会社も含めたところで関係する銀行、証券会社、保険会社へ問い合わせを行い、最長過去10年間分の取引履歴を入手
- 生命保険金、退職金の支払調書の収集
- 過去の所得税、相続人等の贈与税、関係会社の法人税の申告をチェックすることにより調査対象を絞り込み、特にお金の流れについて入念に調査し、家族間の資金交流や現金出金、申告に計上されていない金融機関などの有無について検討
相続税の調査状況
国税庁は毎年、相続税の調査状況を発表していますが、令和3事務年度(令和3年7月~令和4年6月)に行われた税務調査の結果は下記のとおりです。
令和3事務年度調査状況
実地調査6,317件及び簡易調査14,730件の延べ21,047件の調査を行い、実地調査では5,532件(非違割合87.6%)、簡易調査では3,638件(非違割合24.7%)の申告もれが把握され、1件当たりの追徴税額は、実地調査では886万円、簡易調査では47万円にのぼっています。
また、調査に基づく申告もれ財産の内訳では、その他の財産が910億円(41.6%)で一番多く、次いで現金・預貯金705億円(32.2%)、有価証券274億円(12.5%)と続いています。
相続税調査の確認内容
税務調査は、一般的には管轄税務署が事前連絡のうえ、調査官が相続人宅を訪問します。調査官は、相続人宅で目を凝らして次のような確認をしています。
- タンスや金庫の保管物を確認するとともに申告もれ財産がないかを調査
- 香典帳により取引金融機関を確認
- 家の中にかかっているカレンダーや販促物、封筒などで取引金融機関を確認
- ゴルフのトロフィー等によりゴルフ会員権の有無を確認
- 貴金属や絵画、美術品などの確認
このような調査を何気ない会話や仕草で行っていきます。
調査の結果、申告もれは当然修正すべきですが、税務署と相続人との見解の相違が一番多いのが名義財産の帰属の判断なので、配偶者や子供、孫名義の財産の取り扱いについては生前から注意が必要となります。