相続税は、納期限までに金銭で納付することが原則ですが、納期限までに金銭で一時に納付することが困難な事由がある場合で、一定の要件を満たしている場合には、例外的な納付方法である「延納」又は「物納」が認められています。
延納
延納とは、不動産など金銭以外の財産を多く相続したために、金銭による相続税の納付が困難な場合、担保を提供することにより、年払いでの分割納付を認める制度です。延納が認められるためには次の要件すべてを満たす必要があります。
また、延納の要件の判定は、相続・遺贈により財産を取得した人ごとに行われます。
【延納の要件】
- 相続税額が10万円を超えていること
- 金銭納付を困難とする事由があり、その納付を困難とする金額の範囲内であること
- 納期限までに申請書及び担保提供関係書類を提出すること
- 延納税額に相当する担保を提供すること
※延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下の場合は担保不要
【延納期間と利子税】
延納できる期間と延納税額に係る利子税の割合については、その人の相続税額の計算の基礎となった財産の価額のうち、不動産等の占める割合がどの程度かによって、次の表のとおりとなっています。
区 分 | 延納期間 (最長) | 利子税 (年割合) |
|
---|---|---|---|
不動産等の割合が75%以上の場合 | 不動産等に対応する税額 | 20年 | 3.6% |
動産等に対応する税額 | 10年 | 5.4% | |
不動産等の割合が50%以上75%未満の場合 | 不動産等に対応する税額 | 15年 | 3.6% |
動産等に対応する税額 | 10年 | 5.4% | |
不動産等の割合が50%未満の場合 | 立木に対応する税額 | 5年 | 4.8% |
立木以外の財産に対応する税額 | 6.0% |
物納
相続税は金銭による納付が原則ですが、延納によっても金銭納付が困難な場合で、申告期限内に物納申請書を提出するなどの一定の要件を満たす場合には、物納も認められています。
【物納の要件】
- 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること
- 申請財産が定められた種類の財産であり、かつ、定められた順位によっていること
- 納期限までに申請書及び物納手続関係書類を提出すること
- 物納適格財産であること
【物納適格財産と優先順位】
物納に充てることができる財産は、納付すべき相続税の課税価格の計算の基礎となった相続財産のうち、次の表に掲げる財産及び順位で、その財産の所在が日本国内にあるものに限ります。
なお、相続時精算課税に係る贈与によって取得した財産を除きます。
順位 | 物納に充てることのできる財産の種類 |
---|---|
第1順位 | ①不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等 |
②不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの | |
第2順位 | ③非上場株式等 |
④非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの | |
第3順位 | ⑤動産 |
※物納劣後財産とは、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り物納に充てることができる財産のことです。
【管理処分不適格財産】
物納が認められない財産のことをいい、抵当権が付されている財産、係争中の財産、共有財産、譲渡に関して法令に特別の定めのある財産などが該当します。
【収納価額】
物納財産を国が収納するときの価額は、原則、課税価格の計算の基礎となった財産の価額によります。