被相続人の預貯金は、遺言がない場合には遺産分割の対象とされ相続人全員の合意による遺産分割協議が済んでからでないと払い戻しを受けることができませんでしたが、民法改正により2019年7月1日からは、遺産分割協議が済む前であっても払い戻しを受けることができるようになりました。
また、2019年6月30日以前に発生した相続であっても、この制度の利用が可能であり、この場合、払い戻しを受けた相続人が遺産の一部分割により預貯金を取得したものとみなされます。
払い戻しを受けることができる金額は、相続開始時の預貯金残高の3分の1に払い戻しを受ける相続人の法定相続分を乗じた金額です。
ただし、この計算は、各金融機関の個々の預貯金ごとに計算を行うこと、一つの銀行につき150万円を上限とすることとなっており注意が必要です。
払い戻し手続きは、相続人が単独で金融機関に請求する方法と、家庭裁判所の判断を経たうえで金融機関に払い戻しを請求する方法の2通りあります。
事例1
(法定相続分が1/2として計算しています)
A銀行 相続開始時の残高300万円の場合
300万円×1/3×1/2(法定相続分)=50万円
⇒50万円まで払い戻し可能
B銀行 相続開始時の残高1,200万円の場合
1,200万円×1/3×1/2(法定相続分)=200万円>上限150万円
⇒150万円まで払い戻し可能
事例2
C銀行(普通預金1) 相続開始時の残高600万円の場合
600万円×1/3×1/2(法定相続分)=100万円
C銀行(普通預金2)相続開始時の残高1,500万円の場合
1,500万円×1/3×1/2(法定相続分)=250万円>上限150万円
C銀行の預金口座ごとで計算すると、それぞれ100万円と150万円の合計250万円ですが、上限額は一つの銀行につき150万円までなので、普通預金1と普通預金2の合計で150万円まで払い戻し可能となります。