FMちゅーピー「円満相続安心くらぶ」(令和2年5月15日)」に出演しました。
ラジオ出演内容
毎月第3金曜日のこの時間は、「円満相続安心くらぶ」のコーナーです。
誰でもいつかは経験する「相続」に際し、愛する家族が争うことなく、円満に、そして相続後はさらに幸せになれるように、相続開始までの準備や相続に関する豆知識などについてご紹介します。
お話をお伺いするのは、円満相続支援士、税理士法人タカハシパートナーズの寺尾 大介(てらお だいすけ)税理士です。
ラジオをお聞きの皆さん、こんにちは!
税理士法人タカハシパートナーズの寺尾です。
寺尾さん、よろしくお願いします。
さて、本日はどんなお話をしてくださいますか。
本日は、今年4月1日から施行されることになりました「配偶者居住権」について、その概要と評価の仕方などをご説明したいと思います。
配偶者居住権は、民法が改正されて新しくできた制度ですよね。
はい、平成30年7月の民法改正により、配偶者の居住権を保護するための方策として創設され、今年の4月1日以降の相続から適用が開始されています。配偶者居住権の適用が考えられるケースとしては、相続財産の内訳が不動産は自宅のみで預金は少しという時に、法定相続分どおりで配分を考えると、高齢の配偶者が住んでいる自宅を相続すると預金を相続することができなくて、その後の生活費に不安がある・・・。
といった場合に、配偶者居住権を使うことで、配偶者は住む権利、子供さんは不動産の所有権を相続し、預金も配偶者と子供で分けることができるようになります。つまり、配偶者は自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになるという制度です。ただ、現実には子供が遺産欲しさのために実の母親を実家から追い出すというケースはあまりないと思われます。
そうですよねぇ。じゃあ、どんな時にこの配偶者居住権を適用することが考えられますか。
ケースのひとつとして考えられるのは、妻に先立たれた父親が再婚した、というケースで父親が亡くなった時には、その後妻さんにも相続権がありますが、先妻との子供からすると自分たちが生まれ育った実家に、血のつながらない者が住み続けることに抵抗があり、「実家から出て行ってくれ!」というような場合を想定して、事前に遺言書で妻の居住権を担保しておく、というケースです。
なるほど、家族関係が影響するようですね。
そうですね。今回の民法改正は、日本人の平均寿命が延びたことで少子高齢化が進展し、「配偶者の生活保障の必要性」や「要介護高齢者の増加」、「高齢者の再婚の増加」などといった、相続を取り巻く情勢に変化が生じたことへの対応の見直しが大きな理由とされていますので、相続で増加してきているトラブルに対応するべく改正されています。
そうなんですね。ところで、その他の改正項目にはどんなものがありますか。
残された配偶者の生活への配慮の観点からの改正では、「配偶者居住権」の他、「婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与に関する優遇措置」があります。また、遺言の利用を促進し、相続をめぐる紛争を防止する観点からの改正では、「自筆証書遺言の方式緩和」や「法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設」などがあります。その他の改正としては、「預貯金の払戻し制度の創設」、「遺留分制度の見直し」、「特別の寄与の制度の創設」などがあります。項目だけではちょっと理解しづらいと思いますので、それぞれの具体的な内容は次回ご説明させてもらいますね。
よろしくお願いします。
では、配偶者居住権に戻りますが、相続税においては、その権利の価額の評価をどうするのかという問題が出てきます。この評価については、国税庁から評価方法と評価明細書などが発表されましたので、詳しくお知りになりたい方は国税庁のホームページなどでご確認いただけたらと思います。というのも、ラジオで言葉だけでお伝えするには、私の能力不足もあり、なかなか難しいかなと思いますので、今日は評価計算の考え方みたいなことをお伝えできたらなと思います。
そうなんですね。なるべく簡潔に分かりやすく教えてください。
ハードルを上げますねぇ。がんばります。基本的な考え方としては、建物と土地のそれぞれの価額の内訳を、居住権部分と所有権部分に分けて考える、ということです。例えて言うなら、借地権と同じ考え方ですね。そして、この居住権の価額を計算する時に使われる数値としては、建物の耐用年数と経過年数、配偶者の年齢から見た平均余命年数とそれに応じた法定利率による複利現価率、などです。
複利現価率ですか、なんだか複雑そうですね。
もっと簡潔に言うと、配偶者が後何年その家に住めるのか、ということです。ですから、配偶者が高齢であるほど配偶者居住権の価値は安くなる仕組みです。
そう言われると、なんとなくイメージができますね。
よかったです。建物の場合は、先ほど説明した耐用年数と経過年数が計算に加わるので少し複雑ですが、土地の場合は複利現価率をかけるだけなので簡単です。そして、配偶者居住権の価額が計算出来たら、建物と土地のそれぞれの価額から配偶者居住権の価額を引いたものが所有権の価額、ということになります。
なるほど、居住権と所有権を足して1になる、ということですね。
はい、そういうことです。今説明したのは配偶者がなくなるまでその家に住み続ける場合で、「終身」ということなので平均余命年数が使われていますが、居住期間、言い換えると「配偶者居住権の存続期間」を設定することもできて、計算は、その設定された存続期間を基に行うこととなります。
そうなんですね。
補足ですが、この配偶者居住権を使って相続をする時には、配偶者居住権を設定する登記をする行う必要があります。登記のためには、遺言や遺産分割協議などがないとできませんので、この点は気をつけるポイントです。遺産分割の話し合いが長引いてしまって、自宅に住んでいる配偶者の生活が安定しないといった不安もあろうかと思います。この不安を解消するための「配偶者短期居住権」という制度も新設されており、遺産分割協議がまとまるまで、最短でも6か月は配偶者が自宅に住み続けることが保障され、この制度も今年の4月1日から施行されました。
それは安心ですね。
また、この配偶者居住権は、配偶者の住まいの確保を目的としているので、売買や譲渡はできませんし、相続することもできません。つまり、配偶者が死亡した時には消滅する権利ですので、相続税の対策としても有効に活用していただくことができるんです。
と言うと?
簡単に言いますと、一次相続で配偶者が取得すれば、配偶者控除の特例や小規模宅地の特例を使うことができ、相続税を安くすることができます。そして、二次相続の時には配偶者が取得した権利の価値は消滅するので、財産に計上しなくていいということです。
なるほど、またそのあたりを詳しく知りたい場合は、タカハシパートナーズの無料相談で教えていただけますか。
もちろんです。ぜひご利用ください。
寺尾さん、本日もありがとうございました。