FMちゅーピー「円満相続安心くらぶ」(令和3年7月16日)」に出演しました。
毎月第3金曜日のこの時間は、「円満相続安心くらぶ」のコーナーです。
誰でもいつかは経験する「相続」に関し、愛する家族が争うことなく、円満に、そして相続後はさらに幸せになれるように、相続開始までの準備や相続に関する豆知識などについてご紹介します。
お話をお伺いするのは、円満相続支援士、税理士法人タカハシパートナーズの 寺尾 大介(てらお だいすけ)税理士です。
ラジオをお聞きの皆さん、こんにちは!税理士法人タカハシパートナーズの寺尾です。
寺尾さん、よろしくお願いします。
さて、今日は、どんなお話をしてくださいますか。
本日は、相続税とも関連が深い、「固定資産税」についてお話をさせていただきます。
「固定資産税」ですね、よろしくお願いします。
はい。まず、ご存じの方も多いと思いますが、固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や家屋の不動産や構築物などの償却資産を所有している人に、その固定資産の所在する市町村が課税する税金です。
広島市であれば、毎年4月、5月頃に、固定資産税の課税明細書が送られてきていますよね。あれです。
はい、うちにも届いてますよ。あまりしっかりと確認してみることはないんですが、固定資産税の税額ってどうやって計算されてるんですか。
はい、先ほどの課税明細を見た時に、土地や建物ごとに「固定資産税評価額」という価額が記載されているんですが、一般的にはこの固定資産税評価額に税率をかけて算出されます。
住宅の敷地として利用されている土地は、固定資産税評価額に一定割合をかけて低くする特例措置もあります。また、市街化区域などでは、都市計画税が追加で課税されています。
なるほど、今度しっかり見てみます。
ところで、この税額の基準となる「固定資産税評価額」なんですが、原則として3年に一度評価額の見直しが行われることとなっていて、実は今年、その評価替えがありました。
3年に一回ですか。毎年は見直されてないんですね。
そうなんです。
固定資産税は固定資産の適正な時価を基準として課税されるので、本来であれば毎年評価の見直しをすることが理想的なんですが、膨大な土地や家屋について毎年評価の見直しを行うことは、実務的には不可能であることや、課税事務の簡素化により徴税コストを抑える観点からも、3年ごとの評価替えとされています。
なるほど。
ただ、評価替えを行った後に、地価の急激な下落があったような場合など、その価額のままでは適当ではないと判断されれば、修正されることとなります。
また、固定資産税評価額に対して、ちょっと高すぎない?とか、疑問がある場合は、市町村の税務担当の窓口に問い合わせしていただいたり、その説明を聞いてもなお不服がある場合は、「固定資産評価審査委員会」というところに審査の申し出をすることもできます。
そういう見直しの制度もあるんですね。
最初に、固定資産税は相続税と関連が深い、とお伝えしましたが、というのも、相続税が課税される土地と家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額が基になっているからなんです。
家屋については、そもそも固定資産税評価額をそのまま使いますし、倍率地域にある土地の評価額は、固定資産税評価額に倍率をかけて算出されるんです。
確かに、そうでしたね。
相続税の基準になる路線価や評価倍率は、毎年見直しがされていて、固定資産税よりも精度を上げて、地価の変動に対応して課税することとなっています。
余談ですが、令和3年度の路線価と倍率は、今月1日から国税庁のホームページで公開されていますので、興味のある方はご覧になってみてください。
でも、家屋は固定資産税評価額をそのまま使うのに、土地の評価の時には倍率をかけてちょっと高くするのはどうしてなんですか。
するどい質問ですね。それはですねぇ、相続税の評価の原則は、「時価」なんですね。
ただ、土地の時価は日々変わりますので、その変動する価額を、相続税について言えば、1年に1回の評価時点を基に計算するので、通常時価の80%程度で設定されているんです。これを「評価の安全性の確保」と言います。
そして、固定資産税ではこれが3年に1回の見直しですので、さらに評価の安全性を担保する意味で、通常時価の70%程度で設定されています。
この70%と80%の差を埋めるために、土地の相続税評価は、固定資産税評価額に倍率をかけて求めることとされているんです。
なるほど、そういうことなんですね。
相続税との関連について話を戻しますと、先ほど、固定資産税の通知が5月くらいに届くとお伝えしましたが、そうすると、その年の1月1日には生存していた方が、固定資産税を納める前までに亡くなられた場合、固定資産税はその方の相続人が納めることになります。
つまり、被相続人の債務を引き継ぐ訳ですから、相続税の計算上、債務控除ができるんです。
また、通知が届いた以降にお亡くなりの場合でも、固定資産税を分割納付とされている場合には、亡くなった時点で、まだ支払い債務が残っていることもありますので、確認が必要です。
そうかぁ、確かに何期分とか、分割された納付書がありますよね。
余談ですが、固定資産税の課税明細を見ていただくと、「評価額」と「課税標準額」という2つの価額が設定されています。相続税の評価をする時に、安いからといってついつい「課税標準額」を使う方がいるんですが、課税標準額は先ほどご説明したように、住宅用敷地などの特例価額ですので、相続税評価で使用するのは、あくまでも「評価額」の方です。
お間違えのないように注意してください。
なるほど、相続税評価には固定資産税評価額を使う、ということですね。
はい、またまた余談ですが、不動産の売買をした時に、固定資産税を売主と買主の所有期間で案分して精算した経験がある方いらっしゃると思いますが、そもそもこの固定資産税は1月1日の所有者にかかる税金なので、精算する必要はないんですが、商取引の慣習で行われているものなんです。
なので、売主の方からしたら、売買によって固定資産税精算額相当の経済的利益を受けていることとなり、この精算金額を譲渡代金に加算して譲渡所得税の申告をする必要がありますので、これも注意してください。
そうなんですね。本日は固定資産税についてお話しいただきました。
寺尾さん、本日もありがとうございました。