相続の知識

自宅を生前贈与。預金の分割は?

Q.自宅を生前贈与。預金の分割は?

30年連れ添った夫が亡くなり、遺産の預金4千万円を妻の私と長男、長女で相続します。夫は生前、私に自宅(評価額2千万円)を贈与しました。この場合、預金をいくら受け取れるのでしょうか。年金収入しかなく、住居だけでは先々が心配です。

 

A.

民法の改正で昨年7月から、婚姻期間が20年以上の夫婦間で生前に贈与された居住用不動産(建物や敷地)は、相続財産とみなされなくなりました。つまり遺産分割の計算にいれなくてもよくなったのです。

配偶者の法定相続分は2分の1ですから、相談のケースでは、妻は遺産の預金4千万円のうち2千万円を相続できます。夫に先立たれた妻が生活に困らないよう、より多くの財産を取得できるようになったわけです。贈与のケースには遺言による遺贈もあります。

以前は、生前に配偶者へ贈与した住居は原則、遺産の先渡し(特別受益)とみなされていました。遺産分割の際、配偶者が相続する財産は先渡し分を差し引いて計算していました。

 

相談のケースではどうだったのでしょう。

 

妻が相続できるのは自宅と預貯金の合計額の2分の1にあたる3千万円。既に2千万円の自宅を贈与されているので、受け取れる預金は1千万円にとどまっていました。
遺産分割のときに配偶者の取り分を減らそうと、意図的に自宅を生前贈与することはないと思います。長く連れ添ってきた夫婦ならなおさらでしょう。そうした事情が民法改正の背景にあるようです。

 

注意点もあります。生前に居住用不動産を贈与された場合、贈与税の申告書を税務署に提出しないといけません。詳しい手続きは専門家に相談してください。

<2020年4月20日 中国新聞掲載>

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