レディオモモ「まかせて相続」(令和3年6月17日)」に出演しました。
ラジオ出演内容
お話しをお伺いするのは、相続のことならなんでもおまかせ。
税理士法人タカハシパートナーズ岡山オフィスの 仲村(なかむら)要(かなめ) さんです。宜しくお願いします。さて、今日はどんなお話しでしょうか。
おはようございます。
今日は、相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)の変遷についてお話したいと思います。
現在の制度の概要は、原則として60歳以上の父母や祖父母などから、20歳以上の子や孫などに対し、財産を贈与した場合に、この制度を期限内申告により選択することで、累計2500万円までの特別控除を受けることができる制度です。
父母や祖父母の方の年齢が60歳未満の場合、この制度を使うことはできないのでしょうか。
原則、この相続時精算課税制度の適用要件は、贈与者と受贈者の年齢や続柄のみで、贈与財産には規定がないので、何を贈与しても問題はありません。
しかし、贈与財産が、一定の要件を満たす住宅取得資金の場合は、贈与者の年齢が60歳未満であっても、相続時精算課税を選択することができます。
分かり難いかもしれませんが、例えば60歳未満の父からの贈与で、一旦、住宅取得資金から相続時精算課税を選択すると、選択した年以降の、父からの贈与は全て相続時精算課税となります。つまり、父からの贈与が住宅取得資金以外でも強制的に相続時精算課税が適用されることになります。
ただ、特別控除枠は、住宅取得資金とそれ以外を合計して、同じ2500万円です。
混同しがちですが、同じような制度で、住宅取得資金贈与の非課税特例があります。相続税の計算で持ち戻しがない制度です。
今日お話ししているのは、相続時精算課税制度の住宅取得資金贈与なので、相続税の計算では住宅取得資金でも持ち戻しとなってきます。
それでは、次は変遷についてお願いします。
相続時精算課税制度が創設されてからの大きな改正点をお願いします。
相続時精算課税制度が施行されたのは、平成15年分の贈与からです。現在と比べて違う点は、贈与者の年齢制限が65歳以上であること、受贈者に孫が含まれないこと、ただし、代襲相続人である孫や養子である孫は受贈者に含まれます。
現行法と同じで、一定の要件を満たす住宅取得資金贈与であれば、65歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。贈与財産が住宅取得資金の場合、住宅取得特別控除枠1000万円が2500万円とは別にありました。なので、最大特別控除を3500万円使うことができたんです。
特別控除が3500万円あったんですね。それはいつ頃までだったのでしょうか。
住宅取得特別控除1000万円を上乗せすることができたのは、平成21年12月31日までの贈与です。平成22年1月1日からの贈与は、現行法と同じ2500万円となっています。
それから、贈与者の年齢制限が60歳未満、受贈者に孫が含まれるようになったのは、平成27年1月1日以降の贈与からです。
ところで、平成30年6月に公布された民法の一部改正法において、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い、相続時精算課税制度も受贈者の年齢制限が、20歳以上から18歳以上に見直しがされています。適用時期は、令和4年4月1日以降の贈与からとなっていますので、注意してください。
ところで、平成15年に相続時精算課税制度が創設されるまでは、同じような制度はなかったのでしょうか。
はい、相続時精算課税制度に似た制度はありませんでした。今とは少し違いますが、住宅取得資金贈与の非課税特例はありました。
5分5乗方式(ごぶごしょうほうしき)といって、贈与金額を5で割り、基礎控除を引いたあとに贈与税率を乗じて、5でかけ戻すという計算方式です。
平成12年分までは、贈与税の基礎控除が60万円だったので、300万円までは非課税、平成13年分以降は、基礎控除が110万円となったので、550万円までが非課税だった制度です。この方式は、平成17年分の年末で廃止されています。
昔は、お子さんやお孫さんに、まとまったお金を贈与することが難しかったんですね。
はい、そうなんです。
それから、相続税の相談や申告依頼をいただいた際、過去の贈与についてお尋ねするんですが、住宅取得資金で贈与を受けたとおっしゃるお客様には注意が必要です。
非課税制度は相続税への持ち戻しがないですが、相続時精算課税だと持ち戻しがあるからです。なかには、両方の制度を適用されている方もいます。過去、住宅取得資金の贈与を受けられている方は、その贈与税申告書の控えをちゃんと残しておくことがとても重要です。
今日は、税理士法人タカハシパートナーズ岡山オフィスの 仲村(なかむら)要(かなめ) さんにお越しいただきました。ありがとうございました。