相続登記を放置していたらどうなるの?
遺言もなく、父の財産といえば、多少の預貯金と自宅の土地と家屋で相続税の心配はありません。
財産は全て私が引き継ぐと家族で話がついています。
市役所での固定資産税の口座引落しの手続きも完了し、特に困ることはないので不動産の相続登記はこのままにしておこうかと思います。
なにか気をつけないといけないことがありますか?
相続登記をしておくことは非常に大切です!
相続登記は義務ではありません。
ただ、登記をせずに放置することで売却等ができなくなったり、遺産分割協議が難しくなったりします。
相続登記を放置した場合に考えられるケース
相続人の高齢化により、遺産分割協議が難しくなる
認知症等、判断能力が低下した場合、成年後見人が必要になり、時間と費用がかかることになります。
相続人の考えが変わることがある
当時、協議では相談者が全て相続するとまとまっていても、遺産分割協議書がなく、登記もされていない以上、相談者が全て所有していると主張することはできません。
その後の協議によって法定相続分通りに相続することになった場合、財産を売却してから分配せざるを得なくなったり、財産を取得するかわりにお金を支払うことになったりするかもしれません。
長い年月により、相続人の確定などに時間が掛かる
※相続人の確認は、亡くなった方の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本等で行います。
相続人それぞれに次の相続が発生し、またそれぞれに次の相続が・・となった場合、登記をするためには、この関係者全員の同意が必要となります。円満に協議がまとまれば良いのですが、疎遠になっている人との協議は円滑に進むとは限りません。協議がまとまらない時には、家庭裁判所での調停や審判による分割を行うことにもなりかねません。だからと言って、そのままにしているとさらに相続人は増えるばかりです。
今回のように遺言がない場合、相続登記をするためには遺産分割協議書が必要です。遺産分割協議書とは、亡くなった方の財産を相続人全員でどのように分けるかを話し合い、全員で署名、実印を捺印した書類です。
亡くなった人の住民票の除票または戸籍の附票、戸籍謄本等(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍)、固定資産税評価明細書とともに、遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑証明書、戸籍抄本、住民票など必要書類を添付して相続登記を行います。
協議をはじめ、この書類を集めるためにも時間が掛かることになります。
今回相談者の方は登記をしないということですが、以上のようなトラブルを避けるためにも早めの登記をおすすめします。
それでも登記をしない場合は、遺産分割協議書の作成、全員の印鑑証明書など必要書類一式を保管しておきましょう。また紛失等に備え同じものを複数作っておくことをおすすめします。
今年の3月に新聞報道がありましたが、政府は「相続登記の義務化」など2020年の実現を目指して議論を進めるとの話しもあります。
今後はその都度相続登記を行っていくことが大切になってくるでしょう。