レディオモモ「まかせて相続」(令和2年5月21日)」に出演しました。
ラジオ出演内容
お話しをお伺いするのは、相続のことならなんでもおまかせ。
税理士法人タカハシパートナーズ岡山オフィスの仲村(なかむら)要(かなめ)さんです。宜しくお願いします。
さて、今日はどんなお話しでしょうか。
おはようございます。皆さん、配偶者は相続税がかからない、とよく聞かれると思います。今日は、「相続税の配偶者控除」と呼ばれている制度についてお話ししたいと思います。正確には「配偶者に対する相続税額の軽減」と言います。
本当に配偶者は相続税がかからないのでしょうか。
「相続税がかからない」は間違いです。配偶者も相続税がかかる場合があります。ただ、民法に定められている法定相続分どおりに相続すれば、相続税がかからないようになっています。
具体的には、どれくらいの金額を相続しても相続税がかからないのでしょうか。
2つの金額を比べるんですが、その2つの金額のうち、多い金額まで相続しても配偶者は相続税がかかりません。1つ目は、1億6千万円です。ということは、配偶者は、少なくとも1億6千万円まで相続しても相続税がかからないということです。
2つ目は、配偶者の法定相続分相当額です。法定相続人が配偶者と子供だと、配偶者の法定相続分は2分の1です。もし遺産が10億円あったら、配偶者の法定相続分相当額は10億円の2分の1なので、5億円となります。
ということは、もし遺産が10億円だと1億6千万円と5億円を比べて5億円のほうが多い金額ですから、配偶者は5億円相続しても相続税がかからないということですか。
はい。そのとおりです。ただ、配偶者の法定相続分は誰が法定相続人かによって異なってきます。法定相続人が配偶者と子供だと、配偶者の法定相続分は2分の1ですが、配偶者と被相続人の親だと、配偶者の法定相続分は3分の2、配偶者と被相続人の兄弟だと、配偶者の法定相続分は4分の3、配偶者1人だけだと、配偶者の法定相続分は1分の1、すなわち全てとなります。
法定相続人が配偶者だけだと、全財産相続しても相続税がかからないんですね。
はい。そのとおりです。
どうして配偶者にはこんなに大きな控除があるのでしょうか。
通常、ご夫婦は年齢が近いので配偶者が相続しても遠からず次の相続が発生し、その際、相続税が課税されることになります。
それから、配偶者は被相続人の財産の維持や形成に大きく貢献しています。被相続人が亡くなったあと、残された配偶者の生活保障も配慮しないといけません。このような理由で大きな控除になっていると言われています。
相続税の配偶者控除を適用するための要件は、どんなことがあるのでしょうか。
先ずは、相続税の申告書を必要な書類を添付して税務署に提出することです。次は、配偶者が戸籍上の配偶者であることです。何十年も連れ添ったパートナーでも、入籍の届出をしていなければ、配偶者控除は適用できません。別の見かたをすると、婚姻期間については定められていないので、婚姻期間が数カ月でも配偶者控除を受けることができる、ということになります。
次は、遺産の分割が確定していることです。相続税の申告期限は10カ月です。遺産の分割が確定しなかった場合でも、法定相続分で遺産を分けたと仮定して、期限内に相続税の申告書を提出する必要があります。その際、配偶者控除が使えませんから配偶者も相続税を納付することになります。
相続税の申告期限から数年経って遺産の分割が確定した場合、何か救済措置があるのでしょうか。
はい、もちろんあります。実務では、期限内に提出する相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を添付します。分割が確定したら配偶者控除を適用しますよ、ということが記載された書類です。
遺産が分割された結果、配偶者控除を適用するなどして相続税が納め過ぎであった場合は、更正の請求という書類を提出して、納め過ぎの相続税を戻してもらうことができます。相続税の申告期限後3年経っても分割が確定しない場合は、「遺産が未分割であることについてやむ得ない事由がある旨の承認申請書」というまた別の書類を提出することになります。
最後に相続税の配偶者控除を適用するうえで、何か注意する点はありますか。
相続税は累進課税です。相続税がかからないからと言って極端に配偶者が相続すると、二次相続の時、つまり財産を受け継いだ配偶者が亡くなった時に、多額の相続税がかかってしまうことになります。二次相続でどれだけ相続税がかかるかは、配偶者固有の財産を教えていただければシュミレーションすることができます。
ただ、突然固有の財産を見せてくださいと、税理士やお子さんが言っても、すんなりと受け入れていただけないことがあります。なので、ご夫婦お元気なうちに相続税も含めた相続のことについてお子さんを交えて考えてみてはどうでしょうか。色々とお話しになって、相続税のことで悩まれたら税理士へ相談することをお勧めします。
今日は、税理士法人タカハシパートナーズ岡山オフィスの仲村(なかむら)要(かなめ)さんにお越しいただきました。ありがとうございました。