相続の知識

山林を相続した場合の納税猶予の特例①

概要

特定森林経営計画が定められている区域内に存する山林(立木または土地をいいます。)を有していた一定の被相続人から相続または遺贈により特例施業対象山林の取得をした一定の相続人(「林業経営相続人」といいます。)が、自ら山林の経営(施業またはその施業と一体として行う保護をいいます。)を行う場合には、その林業経営相続人が納付すべき相続税のうち、特例山林に係る課税価格の80パーセントに対応する相続税の納税が猶予されます(猶予される相続税額を「山林納税猶予税額」といいます。)。
この山林納税猶予税額は、林業経営相続人が死亡した場合にはその納税が免除されます。
なお、免除に際しては、その死亡した日から同日以後6か月を経過する日までに、一定の書類を税務署に提出する必要があります。
また、山林納税猶予税額が免除されるときまでに、特例山林について山林経営の廃止、譲渡、転用などの一定の事由等が生じた場合には、山林納税猶予税額の全部または一部を利子税と併せて納付する必要があります。

「特定森林経営計画」とは、市町村長等の認定を受けた森林法第11条第1項に規定する森林経営計画であって、次の要件のすべてを満たすものをいいます。

  1. 属人計画(対象となる山林が同一の者により一体として整備することを相当とするものとして森林法施行令第3条に規定する基準に適合するもの(森林法施行規則第33条第2号に掲げる場合に該当するものに限ります。))であること。
  2. 森林経営計画に森林法第11条第3項に規定する事項(山林の経営の規模拡大の目標およびその目標を達成するために必要な作業路網の整備など)が記載されていること。
  3. 1および2のほか、森林経営計画の内容が同一の者による効率的な山林の経営を実現するために必要とされる一定の要件を満たしていること。

「特例施業対象山林」とは、被相続人がその被相続人の相続開始の直前に有していた山林のうち相続開始の前に特定森林経営計画が定められている区域内に存するもの(森林の保健機能の増進に関する特別措置法第2条第2項第2号に規定する森林保健施設の整備に係る地区内に存するものを除きます。)であって、次の要件のすべてを満たすものをいいます。

  1. 被相続人または被相続人からその有する山林の全部の経営の委託を受けた者により相続開始の直前まで引き続き特定森林経営計画に従って適正かつ確実に経営が行われてきた山林であること。
  2. 特定森林経営計画に記載されている山林のうち作業路網の整備を行う部分が、同一の者により一体として効率的な施業を行うことができるものとして一定の要件を満たしていること。

「特例山林」とは、特例施業対象山林のうち下記の「納税猶予を受けるための要件」の「特例山林の要件」に掲げる要件を満たす山林をいいます。

納税猶予を受けるための要件

この特例の適用を受けるためには、次の要件などを満たす必要があります。

〇被相続人の主な要件

被相続人は、次の①から③までのいずれにも該当する人であること。

  1. 相続開始の直前において特定森林経営計画が定められている区域内に存する山林(森林の保健機能の増進に関する特別措置法第2条第2項第2号に規定する森林保健施設の整備に係る地区内に存するものを除きます。)であって作業路網の整備を行う部分の面積の合計が100ha以上である山林を所有している人
  2. 次のイからハの事項についてその死亡の前に農林水産大臣の確認を受けていた人
    イ 特定森林経営計画の達成のために必要な機械その他の設備を利用することができること
    ロ 特定森林経営計画が定められている区域内に存する山林のすべてについて、特定森林経営計画に従って適正かつ確実に経営および作業路網の整備を行うものと認められること
    ハ 特定森林経営計画に従って山林の経営の規模拡大を行うものと認められること
  3. 特定森林経営計画に従って当初認定起算日から死亡の直前まで継続してその有する山林および他の山林の所有者から経営の委託を受けた山林のすべての経営を適正かつ確実に行ってきた者として農林水産大臣の確認を受けてきた人

「当初認定起算日」とは、特定森林経営計画に係る被相続人(特定森林経営計画につき過去に森林法第17条第1項の規定の適用があった場合にあっては、最初の適用に係る認定森林所有者等)が市町村長等の認定を受けた特定森林経営計画(森林法第11条第3項に規定する事項が記載された最初のものに限ります。)の始期をいいます。

〇林業経営相続人の要件

林業経営相続人は、被相続人から相続または遺贈によりその被相続人がその相続開始の直前に有していたすべての山林(特定森林経営計画が定められている区域内に存するものに限ります。)を取得した個人であって、次の①から③までのいずれにも該当する人であること。

  1. 相続開始の直前において、被相続人の推定相続人である人
  2. 相続開始の時から申告期限(申告期限までに林業経営相続人が死亡した場合は、その死亡の日)まで引き続き相続または遺贈により取得した山林(特定森林経営計画が定められている区域内に存するものに限ります。)のすべてを有し、かつ、特定森林経営計画に従ってその経営を行っている人
  3. 特定森林経営計画に従って山林の経営を適正かつ確実に行うものと認められる要件として一定のものを満たしている人

〇特例山林の要件

特例山林は、林業経営相続人が自ら経営を行うものであって、次の①から③までのいずれにも該当するものであり、相続税の期限内申告書にこの特例の適用を受ける旨を記載したものであること。

  1. 特定森林経営計画において、作業路網の整備を行う山林として記載されている山林であること。
  2. 都市計画法第7条第1項に規定する市街化区域内に所在する山林でないこと。
  3. 立木にあっては、相続開始の日からその立木が森林法第10条の5第1項に規定する市町村森林整備計画に定める標準伐期齢(同条第2項第5号の公益的機能別施業森林区域内に存する立木にあっては、一定の林齢)に達する日までの期間が林業経営相続人の相続開始の時における平均余命と30年のうちいずれか短い期間を超える場合におけるその立木であること。
この特例は、相続税の申告書の提出期限までに相続または遺贈により取得した山林(特定森林経営計画が定められている区域内に存するものに限ります。)の全部または一部について遺産分割がされていない場合には適用できません。

「平均余命」とは、厚生労働省が作成する完全生命表に掲げる年齢および性別に応じた平均余命(1年未満の端数を切り捨てた年数をいいます。)をいいます

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