不動産を譲渡する際の注意点
換価分割や相続税の納税資金に充当するため不動産を譲渡する際、譲渡代金を得るまでに意外と時間がかかり資金計画を見直す必要に迫られることがあります。
不動産が戸建の場合、譲渡物件として売り出すまでに隣地との境界、建築基準法の接道義務、水道管の接続状況などを調査する必要がありますが、その調査はある程度の時間がかかるうえ、これらが普通の不動産として充分な条件を満たしていないケースが往々にしてあります。
例えば、土地の境界が定まっておらず隣地ともめているような物件は買い手の立場からは購入意欲が湧きません。
また、建築基準法の接道義務を満たしていなければ、老朽化した建物の再建築もできないため早期の譲渡は困難です。
もし、相続発生前に使用していない不動産が相続財産にあるならば、譲渡やその事前準備としての調査を行っておくと良いでしょう。
譲渡所得の特例
【相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例】
相続財産については相続税がかかりますが、その相続財産を譲渡すると、譲渡所得税も支払わなければなりません。
そのため、相続から一定の期間内に相続財産を譲渡した場合、譲渡所得税を軽減する特例が設けられています。
相続により取得した財産について相続の開始があった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合、その譲渡した資産の取得費については、本来の取得費または概算取得費(譲渡価額の5%)に、次の算式で計算される金額を加算することができます。
つまり、それだけ譲渡益が減少するので、譲渡所得税が軽減されます。
(算式)取得費に加算できる額 = 相続した財産を譲渡した者の相続税額 × A / B
A:相続した財産のうち譲渡した資産に係る相続税評価額
B:相続した財産を譲渡した者の相続税額に係る課税価格(債務控除前)
【居住用不動産に係る譲渡所得の3,000万円特別控除】
この特例は、生きている人が自己所有の自宅を譲渡した際に譲渡益から3,000万円まで控除することができる制度です。
他方で、相続により取得した被相続人の自宅が、もともと相続人も同居していたものであった場合には、相続後にこれを譲渡することは、生きている人が自己所有の自宅を譲渡することになりますので、この特例の適用を受けることができます。
【空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例】
被相続人が居住していた自宅で相続後は空き家になっていたものを譲渡した場合には、一定の要件を満たすことで、譲渡益から3,000万円まで控除できる特例があります。
適用要件
- 居住要件
相続の直前において被相続人が住んでいた自宅であったこと。
なお、被相続人が老人ホーム等に入居していた場合には、一定の要件を満たさなければ適用を受けることができません。 - 物件要件
① 1981年5月31日以前に建築された建物(旧耐震基準のもの)であること。
② 区分所有登記がされている建物(マンションや二世帯住宅など)でないこと。 - 利用要件
① 相続の直前において被相続人以外に住んでいた人がいなかったこと。
② 相続時から譲渡時まで事業用・貸付用・他者の居住用に使用されていないこと。 - 取得要件
譲渡する相続人が、被相続人の自宅の土地・建物の両方を取得していること。 - 譲渡要件(次のいずれかに該当すること)
① 建物を耐震リフォームした上で、土地と建物の両方を譲渡すること。
② 建物を取り壊し、更地にして土地を譲渡すること。 - 譲渡時期要件
相続開始日から3年経過日の属する年の12月31日までに譲渡すること。 - 金額要件
譲渡金額が1億円以下であること。 - 譲渡先要件
親子や夫婦など特別の関係がある人に対して譲渡したものでないこと。 - 手続き要件
確定申告をすること(様々な添付書類が必要となります)。 - その他
①「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」とは併用できません。
② 母屋と離れがある場合、対象となるのは土地・建物ともに母屋部分のみです。