概要
非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等には、租税特別措置法第70条の7の6から第70条の7の8までの各規定による措置(「特例措置」といいます。)と同法第70条の7の2から第70条の7の4までの各規定による措置(「一般措置」といいます。)の2つの制度があり、特例措置については、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの10年間の制度とされています。
それぞれの制度のあらましと主な違いについては次のとおりです。
特例措置のあらまし
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(「円滑化法」といいます。)による都道府県知事の認定を受ける非上場会社の後継者である相続人または受遺者(「特例経営承継相続人等」といいます。)が、被相続人から非上場会社の株式または出資(「非上場株式等」といいます。)を相続または遺贈(「相続等」といいます。)により取得をし、その会社を経営していく場合には、特例経営承継相続人等が納付すべき相続税のうち、非上場株式等に係る課税価格に対応する相続税の納税が猶予され(猶予される相続税額を「特例株式等納税猶予税額」といいます。)、特例経営承継相続人等が死亡した場合等には、その全部または一部が免除されます。
そして、特例経営承継相続人等の死亡によって、特例経営承継相続人等から非上場株式等を相続等により取得した者についても、一定の要件を満たすことにより、「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等」の適用を受けることができます。
ただし、免除されるまでに、特例対象非上場株式等を譲渡するなど一定の場合には、特例株式等納税猶予税額の全部または一部について納税の猶予が打ち切られ、その税額と利子税を納付する必要があります。
一般措置のあらまし
円滑化法の認定を都道府県知事から受ける非上場会社の後継者である相続人または受遺者(「経営承継相続人等」といいます。)が、被相続人から非上場株式等(一定の部分に限ります。)を相続等により取得をし、その会社を経営していく場合には、経営承継相続人等が納付すべき相続税のうち、非上場株式等に係る課税価格の80パーセントに対応する相続税の納税が猶予されます(猶予される相続税額を「株式等納税猶予税額」といいます。)。
この株式等納税猶予税額は、経営承継相続人等が死亡した場合等に該当したときには、その全部または一部が免除されます。
そして、経営承継相続人等の死亡によって、経営承継相続人等から非上場株式等を相続等により取得した者についても、一定の要件を満たすことにより、「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等」の適用を受けることができます。
ただし、免除されるまでに、対象非上場株式等を譲渡するなど一定の場合には、株式等納税猶予税額の全部または一部について納税の猶予が打ち切られ、その税額と利子税を納付しなければなりません。
特例措置と一般措置の制度の主な違い
特例措置と一般措置の制度の主な違いは次の表のとおりです。
特例措置 | 一般措置 | |
事前の計画策定等 | 5年以内の特例承継計画の提出 【平成30年4月1日から令和5年3月31日まで】 |
不要 |
適用期限 | 10年以内の相続等・贈与 【平成30年1月1日から令和9年12月31日まで】 |
なし |
対象株数(注1) | 全株式 | 総株式数の最大3分の2まで |
納税猶予割合 | 100% | 相続等: 80%、贈与:100% |
承継パターン | 複数の株主から最大3人の後継者 | 複数の株主から1人の後継者 |
雇用確保要件 | 弾力化(注2) | 承継後5年間 平均8割の雇用維持が必要 |
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 | 譲渡対価の額等に基づき再計算した猶予税額を納付し、従前の猶予税額との差額を免除 | なし (猶予税額を納付) |
相続時精算課税の適用 | 60歳以上の贈与者から20歳(注3)以上の者への贈与 (租税特別措置法第70条の2の8等) |
60歳以上の贈与者から20歳(注3)以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与 (相続税法第21条の9・租税特別措置法第70条の2の6) |
(注1)議決権に制限のない株式等に限ります。
(注2)雇用確保要件を満たさなかった場合には、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則第20条第3項に基づき、要件を満たさなかった理由等を記載した報告書を都道府県知事に提出し、その確認を受ける必要があります。なお、その報告書および確認書の写しは、継続届出書の添付書類とされています。
(注3)「20歳」とあるのは、令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」となります。