個人事業や会社経営をされていた方は、何度か税務調査を受けた経験がある方もいらっしゃると思いますが、相続税の税務調査を受けた経験がある方はそう多くいらっしゃらないと思います。
まず、調査が行われることとなった場合、通常であれば税務署から税理士に事前連絡があり、日程調整をすることとなります。
まれに、朝いきなり調査官が自宅にやってきて、「相続税の調査です。」と言われることがあります。
これは、「無予告調査」と呼ばれており、税務署が事前の申告審理の段階で、現金や金などの現物資産の申告除外が想定され、またその規模もかなりの額になると目星をつけた場合に行われる調査方法です。
なぜ、事前に調査の連絡をしないかと言うと、連絡をすれば、当然その申告除外をした現金などは別の保管場所に移され、隠されてしまう可能性が高く、全容解明が難しくなると税務署が考えるからです。
税務調査を行う調査官には「質問検査権」という権限があり、調査を受ける側にはその質問に対して答弁しなかったり、拒否した場合には「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられることが国税通則法で決められています。
これを「受忍義務」と呼んでいるのですが、安心してください。先に書いた「無予告調査」、もし、突然なんの連絡もなく調査官が玄関先に現れても、すぐに「はいどうぞ。」と家に入れないといけないという訳ではありません。
この時の正しい対処法としては、
①「税理士に連絡するので、それまで待ってください。」
と伝え、家の外で待ってもらい、関与税理士に連絡する。
②はずせない予定がある場合は、
「今日はこれから予定があるので、時間を改めて欲しい。」と伝える。です。
この時大切なのは、税務調査には受忍義務があるので、拒否することはできませんが、調査は受けるのだが、税理士の立会が必要であることや、どうしても今はダメなので、違う日時で調整して欲しいことを伝えることです。
これは拒否ではなく、調整ですので、遠慮なく調査官に伝えてください。
ただ、この「無予告調査」も、タカハシパートナーズのように、すべての申告案件に税理士法33条の2の書面添付を行っている場合は、税務署もそう簡単にはできないことになっています。
この書面添付は、税理士が内容をしっかり検討し、自信を持って申告しているという証明ですので、税務署は調査に入る前に、まず税理士に疑問点を確認するという仕組みになっています。これを意見聴取といいますが、この意見聴取が行われずに税務署が直接相続人に連絡することはありませんし、税理士にも秘密の高額な隠し財産の情報を税務署が把握しているということがない限り、「無予告調査」が行われることは、まずありません。
目線を変えてみると、この税理士法33条の2の書面添付をしていない税理士は、相続税の申告に自信がない!ということです。