制度概要
国外転出(国内に住所および居所を有しないこととなること)をする一定の居住者が、1億円以上の有価証券等を所有している場合には、その有価証券等の「含み益」に所得税が課税されます。
【対象者】
国外転出時において、次の(1)及び(2)のいずれにも該当する居住者が、国外転出時課税の対象者となります。
(1) 所有している有価証券等の価額の合計が1億円以上であること
(2) 原則として、国外転出をする日前10年以内において国内に5年を超え住所又は居所を有していること
【対象資産】
国外転出時課税の対象資産には、株式や投資信託、債券などの有価証券以外に、未決済の信用取引やデリバティブ取引、匿名組合契約の出資持分が該当します。
相続時の国外転出時課税
国外転出時課税制度は、対象資産を保有する当人が転出するケースだけでなく、相続において適用されることもあります。
ケースとしては、1億円以上の対象資産を保有する日本国内の居住者が亡くなって、その資産を海外に居住している親族が相続するような場合です。
この場合、相続が開始される段階で対象資産は時価で売却されたものとみなされ、故人の所得税として課税されます。
納税義務者である故人は亡くなっているため、相続人が、相続開始日から4か月以内に準確定申告の手続きを行う必要があります。
納税猶予制度
納税資金が不十分であることなどを勘案し、国外転出の時から5年間納税猶予の適用を受けることができます。
納税猶予の適用を受けるためには、国外転出時までに納税管理人の届け出を行い、確定申告期限までに確定申告書の提出と適切な担保の提供が必要です。
また、猶予期間中は毎年3月15日までに納税猶予継続届出書の提出が必要です。なお、次の場合には猶予税額と猶予期間中の利子税の納付が必要になります。
- 納税猶予期間が満了した場合
- 納税管理人を解任した場合
- 担保不足が生じた場合
- 毎年の納税猶予継続届出書を提出しなかった場合
- 国外転出時課税の対象となった資産を譲渡または贈与した場合
納税猶予期間中に死亡した場合
納税猶予の適用を受けている方が亡くなった場合、猶予税額の納付義務はその相続人が承継します。納税猶予の残存期間についても相続人が引き継ぐことになるため、その後も猶予の適用を受ける場合には、納税猶予継続届出書の提出等を行わなければなりません。