相続の知識

70歳まで社長を続けると年金や社会保険はどうなるか③

ポイント

65歳を過ぎても会社に残る社長は少なくありません。役員報酬を受けながら年金も受け取れるのか、70歳まで働く経営者が押さえておくべき論点を整理します。

報酬を下げれば解決するわけではない

「年金を満額もらうために役員報酬を下げればよい」と考えたくなるかもしれませんが、それほど単純な話ではありません。
在職老齢年金の仕組みそのものは、報酬水準を調整すれば対応できるように見えます。しかし、社長個人の生活や事業承継を視野に入れると、話はそう単純ではありません。
報酬を下げれば支給停止は避けやすくなる一方、社長個人の生活資金は減り、会社の利益、税金、社会保険料、将来の退職金、そして事業承継の進め方にまで影響が及びます。
報酬を下げた分だけ会社に利益が残れば法人税が増え、自社株の評価額が上がって相続税が増えることもあり、年金の数万円のために大きな負担を招くこともあり得ます。
一つの視点として、役員報酬と退職金の役割分担があります。
在職老齢年金の判定に使う総報酬月額相当額には毎月の報酬と賞与が含まれますが、退職金そのものは別に扱われ、税制上も退職所得として給与や賞与より有利になるのが一般的です。
役員報酬を抑えめにし、引退のタイミングで適正な退職金を支給するという設計は、年金・税金・社会保険のいずれの観点からも検討に値します。
一方で、70歳を過ぎても社長を続けるということは、後継者への実質的な権限移譲がそれだけ先送りされているとも解釈できます。
年金や税金の観点だけで報酬や退任の時期を決めるのではなく、後継者がいつ、どの範囲まで経営判断を担えるようになっているかという事業承継の進捗もあわせて確認しておく必要があります。
社長にとって重要なのは、年金を満額もらうこと自体ではありません。相続や事業承継までを一体で見渡し、最も合理的な老後資金設計を行うことにこそ意味があります。

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