ポイント
65歳を過ぎても会社に残る社長は少なくありません。役員報酬を受けながら年金も受け取れるのか、70歳まで働く経営者が押さえておくべき論点を整理します。
65歳を過ぎても社長が残る会社の「年金・報酬・社会保険」
中小企業では、後継者の育成や金融機関・取引先との関係維持、自社株式の承継などを理由に、65歳を過ぎても社長が代表取締役や会長として残るケースが珍しくありません。
こうした場合、年金、役員報酬、社会保険料は別々の問題ではなく、一体で考える必要があります。
その中心にあるのが在職老齢年金です。これは、厚生年金保険に加入しながら、あるいは70歳以降も役員報酬を受けながら老齢厚生年金を受け取る場合に、報酬水準に応じて年金の一部または全部が支給停止される制度です。
老齢基礎年金はこの支給停止の対象ではありません。
判定に使われるのは「基本月額」と「総報酬月額相当額」という二つの数字です。
基本月額は、受け取る老齢厚生年金を月額に換算した金額を指します。総報酬月額相当額は、その月の標準報酬月額に、直近1年間の標準賞与額を12で割った額を加えたものです。
この基本月額は、年金事務所から届く年金額改定通知書や、ねんきん定期便に記載された見込額をもとに、自分で把握しておく必要があります。役員報酬の水準を検討する際、基本月額を正確に押さえていないと、支給停止の有無を見誤ることになりかねません。
2026年4月からは、支給停止の基準額が月65万円に引き上げられました。基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下であれば、老齢厚生年金は原則として全額支給されます。65万円を超えると、超過額の2分の1が支給停止となります。
具体例で見てみましょう。
基本月額12万円、役員報酬50万円の社長であれば合計62万円となり、65万円以下ですので年金は全額支給されます。
一方、同じ基本月額12万円でも役員報酬が80万円であれば合計92万円となり、基準額を27万円超えます。その2分の1にあたる13.5万円が支給停止の目安となります。
高額な役員報酬を受け取る社長には、こうした支給停止のリスクが残っているのです。
注意したいのが役員賞与です。判定には賞与も含まれるため、月額報酬を低く抑えていても、高額な賞与を出せば年金が止まることがあります。

