相続の知識

相続税の物納①

概要

国税は、金銭で納付することが原則ですが、相続税に限っては、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として一定の相続財産による納付(物納)ができます。

(注)財産の生前贈与を受けて相続時精算課税または非上場株式の納税猶予を適用している場合には、それらの適用対象となっている財産を物納の対象とすることはできません。

物納の要件

次に掲げるすべての要件を満たしている場合に、物納を申請することができます。

  1. 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること。
  2. 物納申請財産は、納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、日本国内に所在する次に掲げる財産および順位(1から5の順)となること。
    <第1順位>
    1 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券および出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。)
    2 不動産および上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
    <第2順位>
    3 非上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券および出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。)
    4 非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
    <第3順位>
    5 動産
  3. 物納に充てることができる財産は、物納に不適格な財産(管理処分不適格財産)に該当しないものであることおよび物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと。
  4. 物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること。

(注)自然公園法の国立公園特別保護地区等内の土地で平成26年3月31日までに環境大臣と風景地保護協定を締結していることその他一定の要件を満たすものは、物納劣後財産に該当しないものとして取り扱います。

管理処分不適格財産

次に掲げるような財産は、物納に不適格な財産(管理処分不適格財産)となります。

(1)不動産

  • 担保権の設定の登記がされていることその他これに準ずる事情がある不動産
  • 権利の帰属について争いがある不動産
  • 境界が明らかでない土地
  • 隣接する不動産の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産
  • 他の土地に囲まれて公道に通じない土地で民法第210条(公道に至るための他の土地の通行権)の規定による通行権の内容が明確でないもの
  • 借地権の目的となっている土地で、その借地権を有する者が不明であることその他これに類する事情があるもの
  • 他の不動産(他の不動産の上に存する権利を含みます。)と社会通念上一体として利用されている不動産もしくは利用されるべき不動産または二以上の者の共有に属する不動産
  • 耐用年数(所得税法の規定に基づいて定められている耐用年数をいいます。)を経過している建物(通常の使用ができるものを除きます。)
  • 敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産(申請者において清算することを確認できる場合を除きます。)
  • その管理または処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産
  • 公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産
  • 引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産
  • 地上権、永小作権、賃借権その他の使用および収益を目的とする権利が設定されている不動産で次に掲げる者がその権利を有しているもの
    ① 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」といいます。)
    ② 暴力団員等によりその事業活動を支配されている者
    ③ 法人で暴力団員等を役員等(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事および監事ならびにこれら以外の者でその法人の経営に従事している者ならびに支配人をいいます。)とするもの

(2)株式

  • 譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式で、その手続がとられていない株式
  • 譲渡制限株式
  • 質権その他の担保権の目的となっている株式
  • 権利の帰属について争いがある株式
  • 共有に属する株式(共有者全員がその株式について物納の許可を申請する場合を除きます。)
  • 暴力団員等によりその事業活動を支配されている株式会社または暴力団員等を役員(取締役、会計参与、監査役および執行役をいいます。)とする株式会社が発行した株式(取引相場のない株式に限ります。)

(3)上記以外の財産

その財産の性質が上記(1)または(2)に定める財産に準ずるものとして税務署長が認めるもの

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