民法では、たとえ、法定相続人であってもその相続権を剥奪されることがあります。
相続人に重大な非行等がある場合には、相続できないようにする「相続の欠格」及び「相続の廃除」という制度があります。
欠 格 | 廃 除 | |
内 容 | 相続に関して不当に利益を得ようとした者の相続権を剥奪する制度 | 生前の請求や遺言に基づき家庭裁判所がその相続権を剥奪する制度 |
要 件 | ①被相続人や自分より相続順位の上位者を死亡させ、または死亡させようとしたために刑に処せられたこと ②被相続人が殺害されたことを知っていながら告訴・告発しなかったこと ③遺言の妨害や詐欺・強迫による遺言の作成・変更・取消しをさせたこと ④遺言書を偽造、変造、破棄または隠したりしたこと |
①廃除事由があること (被相続人に対して、虐待や重大な屈辱を加えた場合や著しい非行があった場合等) ②廃除される者は遺留分を有する推定相続人であること |
手続き | 特になし | ①被相続人が生前に家庭裁判所に廃除の請求をする ②遺言による廃除の場合、遺言の効力が発生した後、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求をする |
代襲相続 | 認められる | 認められる |
遺言による相続 | 被相続人が欠格者に遺言により財産を遺贈することになっている場合でも、欠格者は遺贈財産を取得できない | 被相続人が廃除者に遺言により財産を遺贈することになっている場合は、廃除者は遺贈財産を取得できる |
★相続人がいない場合(相続人の不存在)★
相続発生時に、相続人がいるのか明らかでないことがあります。
こうした状態を「相続人の不存在」といいます。
この場合、家庭裁判所は利害関係人(債権者、特別縁故者など)や検察官の請求により相続財産管理人を選任します。
相続財産管理人は相続財産の管理と債権者や受遺者に対する支払いを行います。
併せて相続人捜索の一定の手続きを行いますが、それでも相続人が現れない場合には、特別縁故者に対する財産分与が行われ、最終的に残った財産は国庫に帰属します。
特別縁故者とは、例えば被相続人と生活を共にした内縁の夫や妻、被相続人の看護をしていた人など、被相続人と特別の関係があった人のことをいいます。
特別縁故者は、家庭裁判所に対して財産の請求を行うことができ、正当であると認められた場合には、相続財産の一部ないしはすべてを分与してもらうことができます。